2.3.2 出発機と離陸許可

出発機と離陸許可

タワーの仕事は管制圏(通常空港標点から5nm以内、3000ft)にある航空機に対する離着陸許可、間隔設定となります。ここではまず離陸許可に焦点を当てて説明をします。

離陸準備完了の確認

レシプロ機を出発させる場合は、離陸準備が完了している旨の通報を受ける必要があります。なおタービン機の場合は、誘導路の端に行くと自動的に離陸準備ができたものとします。

準備完了を知らせて下さい。
REPORT WHEN READY.

Kumamoto Tower, JA815C with you.
熊本タワー、こちらJA815Cです。

JA815C, Kumamoto Tower. Report when ready.
JA815C、熊本タワーです。準備完了を知らせてください。

wilco, JA815C.
了解しました。

 

待機指示

滑走路上に航空機がいたり、滑走路にアプローチをしている到着機がある場合には滑走路手前での待機、もしくは滑走路内に入って待機させることになります。

滑走路〔番号〕手前で待機して下さい。(〔交通情報〕)
HOLD SHORT OF RUNWAY〔number〕.(〔traffic information〕)

Tokyo tower, Japanair 1801 with you.
東京タワー、こちらジャパンエアー1801です。

Japanair 1801, Tokyo tower. Hold short of runway 34R. Arrival traffic 3 miles on final.
ジャパンエアー1801、東京タワーです。滑走路34R手前で待機してください。到着機が滑走路まで残り3海里を飛行中です。

Hold short of runway 34R, Japanair 1801.
滑走路34R手前で待機します。

 

滑走路〔番号〕に入って待機して下さい。(〔交通情報〕)
RUNWAY〔number〕LINEUP AND WAIT.(〔traffic information〕)

Japanair 1801, runway 34R line up and wait.
ジャパンエアー1801、滑走路34Rに入って待機してください。

runway 34R line up and wait, Japanair 1801.
滑走路34Rに入って待機します。

 

なお滑走路は空けておくことが原則となります。
離陸準備ができていないトラフィックは必ず滑走路の外で待たせておくようにしましょう。

離陸準備ができていない場合

Tokyo tower, Japanair 1801 with you. Not ready.
東京タワー、こちらジャパンエアー1801です。離陸準備完了していません。

Japanair 1801, Tokyo tower, roger. Hold short of runway 34R. Report when ready for departure.
ジャパンエアー1801、東京タワーです。了解しました。滑走路34R手前で待機し、準備が完了したら報告してください。

 

離陸許可のタイミング(レーダー管制官との調整)

離陸許可を出す前に原則としてレーダー管制官にチャット等を通じて都度承認を得てください。なお予め事前にレーダー管制官と離陸許可を出すタイミングについての打ち合わせが済んでいる場合はこの限りではありません。
離陸許可のタイミング(間隔)としては、大まかにいうと次のような感じになります。

・滑走路上をタクシー、横断している航空機がいないこと
・先行出発機が離陸して5マイル以上離れていること
・当該出発機が離陸するまでに到着機が2マイル以上滑走路から離れていること

 

離陸許可

出発機が離陸する滑走路に近づき、関連するトラフィックと間隔が取れているときには、次の用語により離陸許可を発出します。

 

風〔風向〕度〔風速〕ノット、(滑走路〔番号〕左/右)離陸支障ありません。
WIND〔wind direction〕(DEGREES) AT〔wind velocity〕(KNOT/S), RUNWAY〔number〕CLEARED FOR TAKE-OFF.

Japanair 1801, wind 340 at 12, runway 34R, cleared for take-off
ジャパンエアー1801、風は340度から12ノット、滑走路34Rからの離陸支障ありません。

Runway 34R, cleared for take-off, Japanair 1801.
滑走路34Rからの離陸支障なし。

 

離陸後に旋回を要求した出発機や、直線出発を要求した出発機にはその可否を付けて離陸許可を発出します。

右/左旋回許可します。風〔風向〕度〔風速〕ノット、滑走路〔番号〕離陸支障ありません。
RIGHT / LEFT TURN APPROVED, WIND〔wind direction〕(DEGREES) AT〔wind velocity〕(KNOT/S), RUNWAY〔number〕CLEARED FOR TAKE-OFF.

 

直線出発許可します。風〔風向〕度〔風速〕ノット、滑走路〔番号〕離陸支障ありません。
STRAIGHT OUT DEPARTURE APPROVED, WIND〔wind direction〕(DEGREES) AT〔wind velocity〕(KNOT/S), RUNWAY〔number〕CLEARED FOR TAKE-OFF.

 

あとで連絡します。風〔風向〕度〔風速〕ノット、滑走路〔番号〕離陸支障ありません。
WILL ADVISE LATER, WIND〔wind direction〕(DEGREES) AT〔wind velocity〕(KNOT/S), RUNWAY〔number〕CLEARED FOR TAKE-OFF.

 

左/右旋回許可できません。風〔風向〕度〔風速〕ノット、滑走路〔番号〕離陸支障ありません。
UNABLE LEFT/RIGHT TURN, WIND〔wind direction〕(DEGREES) AT〔wind velocity〕(KNOT/S), RUNWAY〔number〕CLEARED FOR TAKE-OFF.

 

IFR機の出発に際し、レーダーベクターを要求されている場合は、レーダー管制官(デパーチャー/アプローチ)に離陸後の出発経路を尋ねます。その場合は離陸許可の前に、その指示を付加します。

JA815B, continue runway heading. Wind 240 at 11, runway 25 cleared for take-off.
JA815B、離陸後滑走路方位を維持してください。風は240度から11ノット、滑走路25からの離陸支障ありません。

 

JA815B, turn right heading 180. Wind 160 at 12, runway 16, cleared for take-off.
JA815B、離陸後右旋回し、方位180度で飛行してください。風は160度から12ノット、滑走路16からの離陸支障ありません。

 

VFR機の出発に際し、タッチアンドゴー訓練等で場周経路(トラフィックパターン)を許可する場合はどちらの場周経路かを指示します。ただし空港によっては片側の場周経路しか使わない場合もあります。計器進入チャートのサークリング方向の制限が参考になります。

JA815C, right downwind approved. Wind 220 at 10, runway 25, cleared for take-off.
JA815C、ライトダウンウィンドを許可します。風は220度から10ノット、滑走路25からの離陸支障ありません。

 

離陸後の経路が不明な場合はパイロットに尋ねましょう。

JA815C, request your intention.
JA815C、離陸後の意図を教えてください。

 

Tower, JA815C, request straight out departure.
タワー、JA815Cです。直線出発を要求します。

 

意図しない離陸を避けるため「take-off」の用語は離陸許可、もしくはその取り消し以外には使用しないでください。

 

気象状態により離陸許可が出せない場合

VFR機で出発しようとする航空機に対して、気象状態がIMCのため、離陸許可が出せない場合は次の用語により通報します。

(雲高〔数値〕フィート、地上視程〔数値〕メートルです。)IMCなので離陸許可は発出できません。
UNABLE TO ISSUE DEPARTURE CLEARANCE, FIELD IMC, (CEILING〔number〕 FEET, VISIBILITY〔number〕METERS).

 

インターセクションデパーチャー

滑走路の端以外のインターセクションから離陸することをインターセクションデパーチャーといいます。航空機からインターセクションデパーチャーの要求があった場合は、次の用語で許可を発出します。

〔インターセクション名〕インターセクション・デパーチャーを許可します。
〔intersection designator〕INTERSECTION APPROVED.

 

インターセクションデパーチャーで離陸する場合、または複数の滑走路停止位置に出発機が混在している場合にあって、離陸許可や滑走路内での待機を指示を発出するときは当該機のインターセクション名を示して指示します。

風〔風向〕度〔風速〕ノット、〔インターセクション名〕、離陸支障ありません。
WIND〔wind direction〕(DEGREES) AT〔wind velocity〕(KNOT/S), RUNWAY〔number〕AT〔intersection designator〕, CLEARED FOR TAKE-OFF.

JA815C, wind 100 at 12 runway 07 at T-3, cleared for take-off.
JA815C、風は100度から12ノット、滑走路25のT3からの離陸支障ありません。

JA815C, wind 100 at 12, runway 07 at T-1, cleared for take-off.
JA815C、風は100度から12ノット、滑走路25のT1からの離陸支障ありません。

 

〔インターセクション名〕から、滑走路〔番号〕に入って待機して下さい。(〔交通情報〕)
RUNWAY〔number〕AT〔intersection designator〕, LINE UP AND WAIT.(〔traffic information〕)

JA815C, runway 07 at T-3, line up and wait.
JA815C、T3より滑走路25に入り待機してください。

離陸許可の取り消し

離陸許可を取り消さなければならなくなった場合は、次の用語で離陸許可を取り消します。

〔代替指示〕離陸許可を取り消します。(〔理由〕)
〔alternate instruction〕CANCEL TAKE-OFF CLEARANCE.(〔reason〕)

JA815C, Hold short of runway27, cancel take-off clearance, arrival traffic on short final.
JA815C、滑走路27の手前で待機して下さい。離陸許可を取り消します。他機が最終着陸態勢です。

 

出発機が離陸滑走を始めた後に離陸を中断させる場合は、次の用語を使用します。
この場合、離陸許可は自動的に取り消されます。

緊急停止、〔航空機無線呼出符号〕緊急停止。
STOP IMMEDIATELY, 〔repeat aircraft identification〕STOP IMMEDIATELY.

JA815C stop immediately, JA815C stop immediately.

 

周波数変更の許可(ハンドオフ)

VFR機が管制圏を出るような出発をする場合は、管制圏離脱の通報をするように要求します。

JA815C, report leaving control zone.
JA815C、管制圏から離脱する際に報告してください。

 

IFR機の場合には500フィートを超えたあたりでデパーチャー管制官へのハンドオフを指示します。なお出発に際して予めデパーチャー周波数を示している場合は、周波数を省略できます。

Japanair 1801, contact depature.
ジャパンエアー1801、出域管制席と交信してください。

 

ハンドオフはレーダーハンドオフ機能を使わずに、当該機をDrop Track(F4+[asel])するだけで結構です。